イタチ被害の後処理は「撤去・洗浄・消毒・脱臭・再侵入防止・再発監視」を一連の流れとして同日に進めるのが理想である。まずは換気を確保しつつ作業区画を養生し、ヘルメット・ゴーグル・防じんマスク(できればP2〜P3)・ニトリル手袋二重・使い捨て防護服を着用、天井裏には踏み抜き防止板を敷き、感電防止のため照明系統のブレーカーを落とす。幼獣の取り残しや再侵入が疑われる場合は外周確認を先行し、封鎖より“出し切り”を優先する。固形汚染の撤去では粉立ちを避けるため霧吹きで軽く湿らせ、使い捨てヘラと厚手ペーパーで糞を掻き取り、厚手の袋に二重封緘する。広範囲に汚損した断熱材は交換前提で汚染部を切り出し、搬出動線も養生して二次汚染を防ぐ。掃き掃除は舞い上がりの原因となるため避け、HEPA対応の乾湿両用クリーナーでゆっくり吸引し、配管まわりや木口の尿塩はブラシで目地まで掻き出す。洗浄は中性洗剤の希釈液で上から下へ拭き洗い→清水リンス→乾拭きの順に行い、木部・石膏は繊維方向に沿って処理、金属は腐食を避けるため洗剤残りを残さない。油脂や尿酸塩の固着には酵素系・酸素系の併用が効くため、分解→拭き取りを複数回繰り返して“臭い戻り”の原因を減らす。消毒は対象材と表示に適合する製剤を選び、十分な濡れ時間(接触時間)を厳守することが肝心で、多孔質の木部や石膏はたっぷり浸透させ、電装・金属はマスキングのうえ最小限にとどめる。塩素系と酸性剤の混用は有毒ガスを生じるため厳禁で、処理後は送風で乾燥させ相対湿度を60%以下に管理するとカビ・ダニの再発を抑えられる。悪臭対策は「原因除去」「化学的分解」「封じ込め」を重ねる発想が有効で、前段の撤去・洗浄で原因を断ち、酵素系や中和剤で臭気分子を減らし、仕上げに防臭シーラーを木部・石膏面へ塗布して毛細管内の残臭を封じる。活性炭やゼオライトの吸着材を一時的に設置すると残臭の立ち上がりが和らぐ。オゾン機器は無人・密閉・換気時間の厳守を前提に短時間で用い、ゴム・金属の劣化や残留オゾンの安全管理に留意する。ノミ・ダニ対策は宿主・餌・環境の三点同時断ちが原則で、ペットがいる家庭は獣医師の指示で駆虫薬を適用し、寝具やマットは60℃以上の温水洗いや高温乾燥で処理、室内はHEPA掃除機で巾木・隙間・カーペット目に沿ってゆっくり吸引し、使い捨てパックを即時密封廃棄する。成長制御剤(IGR)配合製剤は再発抑制に有効だが、用法・換気条件を厳守し、粉体(珪藻土など)は吸入リスクを考慮して狭所・少量・養生前提で限定使用とする。仕上げでは廃棄物・汚染断熱材・使い捨て防護具を二重袋で封緘し自治体指示に従って処分、搬出動線は最後に消毒拭きで戻り汚れを断ち、使用機材は洗剤→消毒→乾燥で清潔化する。作業記録として汚染マップ、使用薬剤と希釈率、接触時間、作業者、実施日、臭気と湿度の推移を残すと、後日のトレースや保証対応に役立つ。完了判定は目視の清浄、臭気の低減、湿度と温度の安定、夜間騒音の消失、粘着トラップでの捕獲ゼロが継続するかで評価し、強い獣臭の残存や広域断熱交換、配線腐食や漏電の懸念、高所・狭所中心の作業条件では衛生と封鎖を一体で扱える専門業者への委託が安全で確実である。最後に、再侵入防止の恒久封鎖(ステンレス金網やパンチングメタルを機械固定し可塑シールを併用)と外周の誘因管理(残飯・ペットフードの放置回避、樹木や物置の接触是正)を同日に仕上げ、1〜2週間のモニタリングで静穏が続くことを確認すれば、糞尿と悪臭のゼロ化は現実的に達成できる。