有限会社 アップライジング 齋藤 幸一 社長


中古タイヤ販売業
どん底から立ち上げた事業

若くして経験したどん底の生活。
そこから持ち前のバイタリティーで立ち上げた事業は、今、大きく花開きつつある。「人間はいくらでも立ち直れる」
後に続く若者たちに心からの声援を送る。


profile

昭和50年(1975年)栃木県宇都宮市生まれ。
作新学院高校英進部から法政大学経営学部へ進学。
高校、大学時代にボクシング部のキャプテンを務めた。
プロボクサーとなるが24歳で引退。
平成18年有限会社アップライジングを設立し代表取締役社長に就任。


20歳代半ばで経験した大きな試練
齋藤 幸一社長
齋藤 幸一 社長

 有限会社アップライジングは平成18年に創業。齋藤幸一社長も現在37歳の若さだ。扱う主力商品は中古タイヤと中古のホイール。歴史は浅いが、これまでの7年間、毎年着実に業績を伸ばし続けてきた。
 齋藤社長は作新学院高校でボクシング部のキャプテンを務めた。インターハイで総合優勝したほか、全国高校選抜大会ライトウェルター級で優勝、国体ライト級で準優勝し、関東大会最優秀選手賞を獲得した。進学した法政大学でもボクシング部のキャプテンとなり、六大学リーグ戦で3回の準優勝に導いたほか、個人でも全日本選手権ライトウェルター級準優勝、国体ライトウェルター級準優勝を果たす。全日本ライトウェルター級ランキング1位の成績を残し、オリンピック(アトランタ、シドニー)代表候補強化指定選手にも選ばれた。アマチュア時代の輝かしい戦歴を背景にプロに入り、プロボクシングA級トーナメントの決勝戦まで上りつめる。しかし、残念ながらこの試合で敗退し、準優勝にとどまり、これを契機に24歳で引退した。プロアマ合計の戦績は149戦127勝21敗1分96KOを記録している。
 試練はむしろそれからだった。ボクシング引退の後、2年間ほど健康食品販売を手がけるが、慣れない商売の結果、多額の負債を背負いこむことになった。妻の奈津美さんと結婚したばかりのころ。どん底の新婚生活となってしまった。その後は借金返済のため、昼は牛丼店、夜は居酒屋で働きづめの1年間を過ごす。
 今でも深く胸に刻むのは〝イエスタデーパン〟のエピソード。当時住んでいた家の近くのパン屋が、前日の売れ残りの商品を〝イエスタデーパン〟と名付けて、5個300円で売っていた。1日500円で生活する毎日にはとてもありがたかったという。
 「その中に僕も奈津美も大好きな〝焼きそばパン〟が入ってくることがあったのです。人気商品なので滅多にありません。当たった場合は、交代で食べようというルールを決めていました。ところがある日、約束を破って僕が奈津美の分を食べてしまったのです」。それを知った奈津美さんは号泣。そのまま実家に帰ってしまった。「焼きそばパン1個でここまで悲しい思いをさせているのかと、愕然としました。何としてでもこの生活から抜け出さなければと、強く心に誓いました」。


廃品回収の中から新しい事業を見つける

 転機となったのはリサイクルショップに入社して廃品回収の事業に携わったこと。2カ月半の勤めではあったが、ここでリサイクルの基本的なノウハウを身につけることができた。廃品回収に取り組みながら、次のステップへと飛躍する機会をうかがった。
 一般的にはテレビやタンス類などはリサイクルがしやすく、ある程度の道筋もついていたが、その分、手がけている人が多く競争が激しい。寿命も長い。その結果、行き着いたのが中古タイヤのリサイクルだった。
 車を買い替え、前の車を廃車するとなると、必ず中古タイヤが発生する。中には十分に使えるタイヤも多い。さらに車検制度が徹底している日本では、ミゾが減ってくると取り替えなければならない。このようなタイヤを自動車販売店から引き取り、磨き直して販売したり、車検制度のない海外へ輸出するのである。
 県内を調べてみても、こうした事業を手がけている会社はほとんどないことが分かった。「これはチャンスだと思いました。やるからには県内でナンバー1の中古タイヤ販売店になってやろうと心に決め、一軒一軒販売店を訪ね歩いてタイヤを集めるところから始めました。当然ながら最初は門前払いでしたね」。しかし、置き場所に困っている販売店も多く、さらに高値で買い取ってくれるとの評判が広がり、数が確保できるようになった。
 当初は資金的に苦しかったため、小さな店舗からスタート。販売の主力はインターネットやスクラップとしての販売だった。しかし、営業を続けるうちに、ネットで調べて直接店にやって来るお客様が多くなり、約1年後には現在の平出町に移転した。現在の店舗の総敷地面積は800坪あり、在庫タイヤの保管や工場に使っても、十分な広さが確保されている。在庫は常時1万本。「この規模は県内一ではないかと自信を持っています」と力強く語る。
 創業以降、売り上げは順調に伸び、現在は店頭販売とネット販売が約3割ずつ、スクラップ販売が約2割、輸出販売が約1割といったところ。多角的な販売方法によってリスクの分散を図っている。お客様の要望で新品タイヤも扱うようになったが、主力はあくまでも中古タイヤであり、在庫となるのを防ぐために前金でお支払いいただくなどの工夫をしている。
 もう一つ同社の特色はアルミホイールの再生に力を入れていることだ。車好きの人はホイールにも思い入れを持っている人が多い。そのゆがみや傷を、専門技術を持った社員が自社工場で丁寧に修理する。このサービスは愛好者にとても喜ばれているという。


タイヤとホイールと自分を磨け
中古タイヤは常時1万本の在庫がある
中古タイヤは常時1万本の在庫がある

 社訓の中には『磨け磨け自分を磨けタイヤとホイールと自分を磨け』との文言が盛り込まれている。経営理念にも『私達は存在価値のある社会貢献企業を目指します』とある。「中古タイヤの販売で県内一になろうということと同時に、丁寧で元気、心のこもった接客でも一番の会社をつくろうと社員に呼びかけ、実践しています」。その言葉通り、工場の中にはいつも大きなあいさつの声が響きわたる。店の前を通る通学児童の安全を見守る〝声かけ活動〟も毎日の日課だ。
 齋藤社長個人でも東日本大震災の被災地を支援するボランティア活動に熱心に取り組んでいる。これまで義援金を募るラーメン販売や炊き出しなどを行ってきたほか、被災地に桜を植樹して、いつまでも心をつないでいこうという「栃木さくら11」プロジェクトにも力を入れている。
 これまでの実績を基に2月には群馬県に新店舗を出店した。これがうまくいけばさらに広域に、と夢は広がる。苦労を共にした奈津美さんは、現在、専務として経営を支える。
 「ここまで来られたのはいろいろな方々の支えがあったおかげ。栃木県を元気にするために少しでも力になればうれしい。どん底に落ちても人間はいくらでも立ち直りができます。アップしてライジングして行きましょう!」と、若い人たちへ贈る言葉に体験者ならではの説得力がこもる。


有限会社アップライジング
〒373-0012 栃木県宇都宮市平出町251-5
TEL 028-663-0808 FAX 028-663-6594
URL http://www.eco-uprising.com

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